ゴミ屋敷問題の根底には、精神疾患が潜んでいるケースが少なくありません。特に、強迫性障害の一種である「ため込み症」や、うつ病、ADHD（注意欠陥・多動性障害）などが関与している場合、単なる片付けのテクニックだけでは解決が難しいことがあります。ため込み症の人は、物を捨てることに対して強い不安や苦痛を感じ、そのために物が手放せないという特徴があります。物に対する異常な執着があり、他人から見ればガラクタであっても、本人にとっては大切なものだと認識されていることが多いのです。また、うつ病の人は、意欲の低下や倦怠感から、片付けを始めること自体が困難になります。日々の生活を送るだけでも精一杯で、散らかった部屋を片付けるエネルギーが残されていないのです。ADHDの人は、物の整理整順が苦手であったり、片付けの計画を立てるのが難しいといった特性があります。どこから手をつければ良いか分からず、衝動的に物を集めてしまう傾向もあります。これらの精神疾患が背景にある場合、周囲の人はまずその病状を理解し、本人の状態に合わせた適切なサポートを考える必要があります。頭ごなしに「なぜ片付けられないのか」と責めるのではなく、専門医の診断を受け、適切な治療と並行して片付けを進めることが重要です。精神科医やカウンセラー、作業療法士など、多職種連携でのサポートが有効な場合もあります。片付けは、病状が改善するにつれて徐々に進められるようになります。焦らず、本人のペースを尊重しながら、根気強く寄り添う姿勢が求められます。