家の中にキクイムシの木くずを見つけて、不安な日々を送り、駆除に多大な労力と費用を費やす。そんな事態を避けるための最も確実な方法は、そもそもキクイムシが住み着くことのできない家、つまり「予防」という考え方を家づくりや家具選びの段階から取り入れることです。キクイムシの被害は、建ててから、買ってから始まるのではなく、その前の選択から始まっているのです。まず、家を建てる際、あるいはリフォームする際の「建材選び」が極めて重要です。キクイムシは、栄養源となるデンプンを多く含む広葉樹(ラワン、ナラ、キリなど)を好んで加害します。そのため、構造材や内装材には、デンプンが少なく被害に遭いにくいとされる針葉樹(ヒノキ、スギ、マツなど)を選ぶことが、非常に有効な予防策となります。また、昨今では、製造過程で高温処理や防虫処理が施された建材も多く流通しています。設計士や工務店と相談し、こうしたキクイムシ対策が施された木材を積極的に採用することを検討しましょう。次に、「家具選び」にも注意が必要です。特に、海外から輸入された安価な木製家具や、アンティーク家具などは、木材の検疫や燻蒸処理が不十分で、内部にキクイムシの卵や幼虫が潜んでいる場合があります。デザインや価格だけでなく、使用されている木材の種類や、生産国、処理の有無などを確認する習慣をつけることが大切です。そして、日々の「環境管理」も欠かせません。キクイムシは湿度の高い環境を好むため、定期的な換気を心がけ、室内の湿度を60%以下に保つように努めることも、地味ながら効果的な予防策です。悲劇的な木くずのサインを見ないためには、こうした事前の知識と賢い選択が、何よりも強力な盾となるのです。